仕事に繋げる読書は量じゃないらしいよ!
よく、一流の経営者は読書家だと言われています。ファーストリテイリングの会長兼社長:柳井正さんや、マイクロソフトの創業者:ビルゲイツは相当な読書家のようです。そんな彼らを真似して本を大量に読もうとしても、読書が習慣づいていない人にとって文字を読むこと・内容を頭に入れることは非常に難しいことです。また、読書を仕事に活かすためには、ただページをめくるだけでは意味を成しません。本を読んで学んだことを実生活に取り入れる必要があります。
「外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術(山口周 著)」では、大学で美術史を専攻し電通に入社。その後、統計や経営の知識がまったく無いままにコンサルの道に進んだ著者:山口周さんが、一流のコンサルになるまでに導き出した読書を仕事に繋げる技術が紹介されています。ビジネススクールにも通わず、MBAも持っていなかった山口さんはどんな読書をしてきたのでしょうか。そこには上手な読書をするためのいくつかのポイントがありました。
目次
仕事に繋がる本は2種類ある
「仕事に繋がる本」をイメージすると、すぐにビジネス書が思い浮かぶかもしれません。これは、著者:山口さんによれば半分正解です。「仕事に繋がる本」は大きくこの2種類に分けることができるといいます。
- ビジネス書の名著
- リベラルアーツ=教諭に関連する本
その理由について、著者は本でこのように説明しています。
筆者は、ビジネスパーソンが継続的に高い知的生産性を上げるためには、2種類の読書が必要だろうと考えています。
それは、ビジネス書の名著をしっかり読む、いわばビジネスパーソンとしての基礎体力をつくるための読書と、リベラルアーツ=教諭に関連する本を読む、いわばビジネスパーソンとしての個性を形成するための読書の2種類です。
出典:外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術(山口周 著)
しかし、なぜこの2種類が必要なのでしょうか。その理由について、フィギュアスケートの競技に例えながらこのように説明します。
ビジネス書の名著を読むことはもちろん必要ですが、それで充分というわけではありません。ビジネス書の名著はいわば「規定演技」のようなもので、これを知らなければ及第できないわけですが、知っていたからといって、他人から抜きん出ることは難しい。特に、レベルの高い集団になればなるほど、こういったビジネス書の知識は「知っていて当たり前」になりますから、差別化の源泉にはなりにくいでしょう。
そこで、求められるのがリベラルアーツ=教養に関する知識です。これが、いわば「自由演技」となり、ビジネスに関連する知識と組み合わさることで、「その人らしい知的成果物」につながることになります。
出典:外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術(山口周 著)
つまり、ビジネスについての基本的な知識はビジネス書で習得し、その人らしさ(=個性)を磨くためにリベラルアーツ=教養に関する本が活きてくる、ということです。ただし、ビジネス書を飛び越えてリベラルアーツ=教養に関する本だけを読むのはNGです。なぜなら、ビジネスの基本的な知識がないと、リベラルアーツをどのように仕事に繋げればいいかが分からないからです。
「ビジネス書の名著」の読み方
ビジネス書の名著を読む場合には、メモを取ったりする必要がないと著者はいいます。
ビジネス書で得た知識や感性というのはすぐ明日から役立つのに対して、リベラルアーツで得た知識や感性というんは、いつ役に立つのかはっきりしないからです。(中略)すぐに使う道具であればわざわざ倉庫にしまう必要はありません。これがビジネス書に関しては読書ノートをつくらなくてもよいというひとつ目の理由です。(中略)2つ目の理由は、良書が訴えているメッセージカードというのは非常にシンプルかつクリアなので忘れないということです。
出典:外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術(山口周 著)
著者が指しているビジネス書の名著というのは、入門書の中でも特に良書とされているものです。どんな本を読めばいいのかについては、本書の中で詳しく紹介されていますが、その中でも必須6冊とされているものを紹介していきます。
超基本の6冊
『MBA経営戦略』(相葉宏二/グロービス・マネジメント・インスティテュート編、ダイヤモンド社)
『グロービスMBAマーケティング』(グロービス経営大学院 編・著、ダイヤモンド社)
『意思決定のための「分析の技術」 最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法』(後正武、ダイヤモンド社)
『ざっくり分かるファイナンス』(石野雄一、光文社)
『人事屋が書いた経理の本』(協和酸酵工業、ソーテック社)
『新版 問題解決プロフェッショナル 思考と技術』(齋藤嘉則、ダイヤモンド社)
「リベラルアーツ=教養に関する本」の読み方
「リベラルアーツ=教養に関する本」というのは、歴史学や生物学に関する本のことを指します。著者は、こういった知識がその人に個性を与え、他の人との差別化ができると述べましたが、これらの知識をどのように実務に活かすのか。そこには「抽象化」という技術が必要です。
抽象化とは、細かい要素を捨ててしまってミソを抜き出すこと、「要するに〇〇だ」とまとめてしまうこと。モノゴトがどのように動いているのか、その仕組み=基本的なメカニズムを抜き出すことです。経済学の世界では、これを「モデル化する」と言います。
出典:外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術(山口周 著)
抽象化できない人はただの物知りになってしまう、と著者は言います。実際に教養書で読んだことを抽象化について、このように例を挙げています。
・事実=アリ塚には一定程度遊んでいるアリがいないと、緊急事態に対応できずに全滅するリスクが高まる
・抽象化=平常時の業務量に対して処理能力を最適化してしまうと、大きな環境変化が起こったときに対応できず、組織は滅亡してしまう?
出典:外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術(山口周 著)
同時に著者は、仕事に関する基本的な問題はビジネス書に書いていあることを実践することで対応できるといいますが、それよりも難解な問題については、教養書から得られる抽象化された知識が良く効くと言います。仕事のレベルが上がれば上がるほど教養書から得る学びが大切になってきます。
「リベラルアーツ=教養に関する本」の種類
教養書は一体どんなものを読めばいいのでしょうか。同書では7つのカテゴリーがオススメされています。
- 哲学(近・現代思想)
- 歴史(世界史・日本史)
- 心理学(認知・社会・教育)
- 医学・生理学・脳科学
- 工学(含コンピューターサイエンス)
- 生物学
- 文化人類学
興味のあるカテゴリーから始めてみて、ゆくゆくは2~3のカテゴリに詳しくなれると良いようです。ビジネス書と違って、必ず読むべきとするものは指定されていません。まずは定番と言われている本を読んでみて、それから「面白そう!」と思った本に手を付けていくのが良さそうです。
一字一句読む必要はない
また、本の読み方として一字一句読み込む必要は無いと著者は言い切ります。パレートの法則に従って、本に書いてあることの2割のエッセンスを読めば、8割の効果が得られることが理由です。しかし、この2割が本のどこに書いてあるのかは、結局一度は読まないことには分からないですし、ある程度の量を読まなければ、どれがエッセンスなのかを見分ける力もつかないといいます。効率のよい読書の技術を身に付けるためには、ある程度の量を読む必要がありますが、本に慣れるためには「面白くない」と思った部分を飛ばして読み進めることも有効のようです。
読書は量じゃない:まとめ
ポイント
- 読書を仕事に繋げるための技術がある
- 仕事に繋がる本は、①ビジネス書の名著と、②リベラルアーツ=教養に関する本
- 本は一字一句読む必要はない