Amazonでは企画を実行へと移していく前に、まず社内向けにプレスリリースを書きます。
プレスリリースとは、企業が新しい商品やサービスについて公式に発表する文書のこと。
本来は商品の発売やサービスが開始される直前に書かれるものですが、Amazonではアイデアの段階でまず先にプレスリリースを書きます。
これは「Working Backwards=お客様を起点にして考える」というAmazonの文化がもとになっています。
この記事でわかること
- Amazonで先にプレスリリースを書く理由
- Amazon流のプレスリリースの定義
- Amazon流のプレスリリースの書き方
この記事では、実際にAmazonで働いたことのある筆者がAmazon流のプレスリリースの書き方について詳しく紹介していきます。
目次
Amazonで最初にプレスリリースを書く理由
Amazonは「地球上で最もお客様を大切にする企業」をテーマに掲げています。
このお客様第一のポリシーは、社内では「Customer Obsession(カスタマーオブセッション)」とも呼ばれ、社員が守るべき13の社訓のうちの一つとなっています。
何よりもまず最初にプレスリリースを書くことで、事前に新しい商品やサービスを細部にいたるまでイメージし、お客様にとって価値あるアイデアなのかどうかを確かめることができるのです。
本来、プレスリリースとは企業が新しい商品やサービスについて公式に発表する文書のこと。
このように、まず最初にお客様を起点としてアイデアを拡げることをAmazonでは「Working Backwards(ワーキングバックワーズ)」といいます。
「Working Backwards」の考え方については別記事で詳しく紹介していますので、こちらも参考にしてみてください。
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AmazonのWorking Backwards(1・6ページャー)の意味とは
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Amazon流のプレスリリース=1 or 6 pagerとは?
まず初めにお客様について考えることを「Working Backwards(ワーキングバックワーズ)」と言いましたね。
とりわけ、社内向けにプレスリリースを書くという手法については「Working Backwards "法(Method)"」と呼んでいたりします。
このプレスリリースは、何度も言っていますがあくまで社内向け。
そのアイデアを実行するかしないかをマネージャーやチームが判断するための資料です。
プレスリリースはたいていA4一枚(1 pager)、大規模なものであればA4六枚(6 pager)と長さが決まっています。
この長さ(=枚数)の部分を抜き出して、1 pager(ワン ページャー)あるいは 6 pager(シックス ページャー)と呼ぶことが多いです。
Amazonではパワポの代わりに1ページャー(または 6 ページャー)
このプレスリリースは、AmazonではPower Point資料の代わりとなっています。
一般的にプレゼンといえば、Power Pointで作ったスライドを見せながら行うことが多いですが、AmazonでPower Pointはあまり使いません。
代わりに1ページャー(または6ページャー)を作成し、ミーティングは参加者全員が黙って資料を読み込むところから始まります。
「AmazonがPower Pointを禁止している」という噂の真相については別記事で詳しく紹介しています。
こちらも参考にしてみてください。
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AmazonはPower Point禁止(?)の真相
AmazonのPower Point禁止は本当? ぺんちゃんAmazonってパワポ禁止なの?それって本当? 禁止ではなく、「推奨されていない」が正しいよ。過去にジェフベゾスが株主にあてた手紙がきっかけ ...
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Amazon流のプレスリリースの書き方
Amazon流のプレスリリースでは、お客様にどのようなメリットがあるのか具体的かつ現実的に詳しく書かれている必要があります。
1枚であっても6枚であっても、基本的には下記5つの質問に答える形で表現されます。
ポイント
- 対象となるお客様は誰か?
- お客様が抱える課題や改善点は明確か ?
- お客様が受けるメリットは明確か?
- お客様のニーズやウォンツをどのように知ったか?
- お客様の体験が描けているか?
このプレスリリースはあくまで社内向けのため、本来のプレスリリースには含まれない内容も含まれますが、実際のAmazonのプレスリリースを参考にしてみるのも良いでしょう。
1 pager(=A4一枚)の場合
1ページャーはA4一枚です(裏は使いません)。
文字のサイズは10~11ポイント。
具体的でありながらも、頭から読んでいって簡潔に内容が理解できる資料にする必要があります。
1 pagerの構成例
- サマリー:概要を簡潔に書く
- 問題点:現在抱えている問題について
- ゴール:アイデアがどのように問題を解決するのか
- タイムライン:現実的なスケジュールを書く
- リソース:参考資料などを載せる
たった1ページの資料とはいえ、最後まで読まれないことを見越して冒頭に「結論」を持ってきます。
その次にチームや会社が抱えている問題について触れたあと、このアイデアがどのように前述の問題を解決するのかを記載します。
ゴールには曖昧な言葉を使わず、「〇〇率を〇%改善させる」や「売上を前年比〇%上回る」などのように必ず数字を用いるようにしましょう。
そのあとに具体的なタイムラインを記載します。
いつから準備を始め、いつローンチするのかという始まりと終わりのスケジュールはもちろん、途中経過についても現実的かつ具体的な日時を想定して記載します。
1ページに収まらない参考資料についてはURLを記載するか画像を別添えで用意しましょう。
書く内容に合わせて構成を変更して構いません。
1枚で全部詳細が分かるような記事を重要な点から説明していくイメージで作成してみてください。
6 pager(=A4六枚)の場合
6ページャーは1ページャーをより詳細にしたもので、大がかりなプロジェクトの場合にのみ使用されます。
また、Amazonの創業者であるジェフベゾスは、過去に株主に宛てた手紙の中で「6ページャーを完成させるには1週間以上かかって当然」と述べています。
あくまで参考資料としてですが、6ページャーの構成例を紹介します。
太字の部分が1ページャーに加えられている項目です。
6 pagerの構成例
- サマリー:概要を簡潔に書く
- 問題点:現在抱えている問題について
- ゴール:アイデアがどのように問題を解決するのか
- カスタマーニーズ:実際のお客様のニーズに合っているのか
- マーケットオポチュニティー:マーケットに対する見込み
- ビジネスケース:ビジネス的な側面での見込み
- タイムライン:現実的なスケジュールを書く
- Q&A:想定される質問にあらかじめ答える
- リソース:参考資料などを載せる
一口にAmazonといっても部署やチームによって内容が異なりますので、こちらの構成はあくまで例として捉えてくださいね。
【まとめ】Amazon流のプレスリリースの書き方
いかがでしたか?
AmazonではPower Pointを使った華やかなプレゼンの代わりに、A4 1枚あるいは6枚で構成される文書=1(6)ページャーを使用します。
これは「社内向けのプレスリリース」とも呼ばれ、何よりも先にお客様を具体的にイメージしようとする文化に基づいたものです。
このように、お客様を起点にして考えることを「Working Backwards」と呼び、地球上で最もお客様を大切にする企業を目指すAmazonにとってはDNAともいえる基本的な考え方となっています。
どこまでも合理的なAmazonの文化をぜひ日常にも取り入れてみてくださいね。
Amazonの文化については他の記事でも詳しく紹介しています。
こちらの記事も参考にしてみてください。
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この記事を書いた人:おまち